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2024年税制改正で格段に活用の場が広がった、税制適格ストックオプション。

これに限らず、現在は、ポイント制度を利用したものや、信託を活用したものなど、様々なインセンティブ報酬が存在しており、今は百花繚乱の状況にあります。

社会的な変化のスピードや激しさが増すなか、企業の成長や成功は、常に変化やチャレンジを恐れない役職員のモチベーションにかかっています。

インセンティブ報酬は、固定報酬とは違い、役職員のチャレンジに報い、モチベーションを維持するために効果のある報酬制度です。

このコラムでは、百花繚乱の状況にあるインセンティブ報酬の目的と種類を整理し、活用のポイントを解説します。

様々なインセンティブ報酬から、企業にとってベストな制度をチョイスすることは、企業のビジネスの成功につながります。

このコラムを機会に、インセンティブ報酬の導入を検討してみるのもよいでしょう。

1 インセンティブ報酬の目的

インセンティブ報酬は、企業の創業時や人事評価のタイミングなどに合わせて、金銭のみではなく、その企業の株式、新株予約権や将来的これらに交換されるポイントを報酬として交付するものです。

インセンティブ報酬と対比されるのは、固定報酬です。固定報酬は、月給のように、この期間でいくらと固定されている報酬制度です。

企業が成長し、成功していく場合、通常はその企業の株式の価格は上昇します。インセンティブ報酬として、株式や、株式を一定の価格で取得できる権利である新株予約権を保有している役職員は、企業の成長や成功により、株式の価格の上昇による金銭的利益(キャピタルゲイン)を得ます。

これに対して、固定報酬を得ている役職員は、企業の成長や成功によっても固定の報酬額は上昇せず、ベースアップやボーナスでしか金銭的利益を望むことはできません。

つまり、インセンティブ報酬は、企業の成長や成功と役職員の金銭的利益を連動させることにより、役職員に対して、企業を成長、成功させる動機(インセンティブ)を持たせることができます。

企業にとって、望ましい動機(インセンティブ)を役職員に持たせることが、インセンティブ報酬導入の大きな目的となります。制度設計が上手くいけば、役職員は単なる雇われではなく、創業者・経営者と同じ船に乗る仲間となってくれることでしょう。

2 インセンティブ報酬の種類
(1)報酬の種類

インセンティブ報酬を整理する視点は、まず、付与する報酬として何を交付するかです。

交付する報酬の種類としては、株式、新株予約権が一般的です。

他方で、金銭または商品、旅行などの現物支給でも設計は可能です。一般的な金銭ボーナスでは、業績や役職員の営業成績に連動される部分もあるので、広い意味ではインセンティブ報酬に該当しますが、より直接的に企業の成長や成功に対する動機(インセンティブ)を与える観点で、このコラムでは、株式と新株予約権に限定して整理を行います。

株式と新株予約権の使い分けをどのようにするのかは、色々な観点がありますが、企業の株価が上昇する可能が高いのか、現状維持または下落する可能性もあるのかによるというのが1つの有力な考え方です。

ベンチャー企業などの、将来の株価の上昇が見込まれるステージの企業であれば、将来の株価よりも低い価格で株式を取得できる権利である新株予約権がインセンティブとして機能するため、一般的には新株予約権が選ばれます。上場前なので株主を過剰に増やしたくないという企業側のニーズにも適しています。

他方で、既に上場している会社などの企業で、株価の大幅な上昇が見込まれず、逆にマーケット環境等によっては下落も見込まれる会社においては、新株予約権を行使する局面(つまり、株価>払込価額の局面)が限定され、インセンティブとして十分に機能しません。したがって、このような企業においては、株式が選ばれることになります。

(2)時間軸

2つ目の視点は、企業の成長や成功に対する役職員の貢献を評価する時間軸です。

すなわち、インセンティブ報酬を、役職員の過去や現在の貢献を評価し、これに報いるために交付するのか、はたまた、未来の貢献も期待して評価し交付するのかという視点です。

この違いは、

株式や新株予約権を、今いる役職員に直接発行する形(これを「直接型」といいます。)にするか

株式や新株予約権を直接交付せず、まずは信託に発行しておき、役職員の貢献に応じてポイントを付与し、将来の時点で、付与ポイントに応じた株式や新株予約権を交付する形(これを「信託型」といいます。)にするのか

という違いにつながります。

企業の成長や成功は長い時間軸で行われます。起業時から参加している社員、今いる社員、将来入社してくる社員、どの社員にどの時点で評価を行い、どの程度の大きさの株式や新株予約権の形で報いるか、という視点での検討が必要です。

3 制度設計のポイント

直接型、信託型の違いは、貢献の評価や報いる時制の違いだけではありません。

インセンティブ報酬として、株式や新株予約権を直接交付してもらえる方が、役職員の満足度は高くなります。

ポイントという、それ自体法的権利ではなく、将来の評価によって失効などもありうるものより、株式や新株予約権などの現物を直接もらえる方が、役職員の満足度が高くなるのも必然でしょう。

他方で、直接型は、一度、役職員に交付してしまうと、それを取り上げたり、失効させたりするには、株式・新株予約権の内容の検討を含めた事前の制度設計や役職員の同意が必要となります。

企業の成長ステージにより、役職員の役割も変わるため、過去、株式や新株予約権を交付していた社員が企業の成長についていけないことも残念ながら可能性としてはあり得ます。

この点、信託型は、ポイントの失効をポイント管理規程に盛り込むなど、制度設計の柔軟性にメリットがあります。

また、コスト負担も制度設計の考慮ポイントになります。

信託型は、信託会社や信託銀行に、株式や新株予約権を信託するため、信託報酬というコストが発生します。他方で、株式や新株予約権の発行はまとめて行い、個々の役職員へ都度交付は行わないため、発行事務や会社法上の発行手続のコストは低く抑えられます(実務上は、会計や算定に要するコストも検討する必要があります)。

直接型はこの逆で、信託報酬などの費用は発生しませんが、個々の交付ごとに、発行事務や会社法上の手続が必要となります。

一般的に、コストやシンプルさ、役職員の満足度を重視するなら直接型。コストやシンプルよりも、制度設計の柔軟性や将来の社員も含めた公平性を重視するなら信託型ということになります。

その他にも、固定報酬との連動や採用、人事評価にどのように取り入れていくのかというポイントも重要です。

インセンティブ報酬は、金銭的利益の多寡や税制、会計上のメリット、デメリットがともすると重視されがちですが、これらの視点だけでなく、企業としてどのような役職員とともに成長して行きたいのか、どのような役職員の貢献に報いたいのかという視点の方が重要な場合もあります。

企業のカルチャーにフィットしたインセンティブ報酬の導入は、財務的な問題だけではなく、人事的経営的なマターであることを意識しておくことも重要なポイントとなります。

4 専門家に相談するメリット

インセンティブ報酬制度の設計は上述の視点だけでなく、会社法、商業登記法、税法、会計、人事、行動科学、経営などの様々な専門知識が必要です。

また、株式は資金調達(エクイティファイナンス)にも重要な役割を果たすところ、現在・将来の投資家(ベンチャーキャピタル等のファンド)の意向や、そちらに渡すべき株式・新株予約権との兼ね合いも慎重に考えなければいけません。

もし、自分の会社には合わないインセンティブ報酬を導入した場合、インセンティブとして機能しないだけではなく、社員間の不公平を生み出し、逆に企業の成長や成功を阻害する要因になってしまう可能性もあります。

さらに、企業のステージに合わせたインセンティブ報酬の継続的なメンテナンスも重要です。

上記のような観点から、企業の成長や成功につながるインセンティブ報酬を設計やそれを維持するためにも、インセンティブ報酬の導入段階や、既存の報酬制度に課題感が出てきた段階において、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

当事務所においても、初回30分までの無料相談を実施しております。お気軽に、お問い合わせフォームからご連絡下さい。

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