5月11日付の読売新聞で、宮崎市青島地域の青島まちづくり協議会が、デジタル住民権NFTを販売するとのニュースがありました。万博でもNFTラリーが行われるなど、活用は浸透しつつあります。
NFTとは、”Non-Fungible Token”のことで、ブロックチェーン技術を活用した偽造不可能な鑑定書、所有者証明書付きのデジタルデータをいい、これによりNFT保有者に唯一無二の資産価値を付与することができる技術です。
分かりやすさを優先して、語弊を恐れずに言うならば、所有者証明書のついた、デジタル化した会員権やオーナー権をイメージしていただければいいでしょう。
欧米では、2017年頃からNFTの販売が行われ、ゲームのNFT、アートのNFT、プロスポーツのNFTなどで活用され、市場規模は、2022年に2兆円規模を超えるなど、一時期、すさまじい勢いがありました。
日本では、アートのNFTやミュージシャンのNFTを販売する大手マーケットプレイスが存在し、不動産や観光の分野においてもNFTの活用事例が広がっています。また、冒頭で取り上げた自治体によるNFT活用も広がってきています。
青島まちづくり協議会の発行したデジタル住民権NFTは、購入者に主に以下の特典があります。
①「青島まちづくりアンバサダー」を呼称できる
②写真の提供
③コミュニティでの投票権
④青島神社の日向神話館の入館料が半額
今回は、当事務所で住民権NFTを購入したため、当事務所も、めでたく「青島まちづくりアンバサダー」となったことになります。
NFTは、青島NFTの例をみれば分かるとおり、その保有者の特典の設計の自由度が高く、顧客に見える「オモテカタ」として、企業がリピーター顧客やファン層、顧客参加によるサービス改善のエコシステムを作っていく上で、強力なツールになり得ます。
他方で、華々しい「オモテカタ」ばかりに目がいき、「ウラカタ」としてのコンプライアンスや運営、事務負担などへの目配せを怠ると、必要な許認可の取得漏れなどによる違法なサービスとなってしまう場合があります。また、NFTの過剰発行による顧客満足度や企業へのロイヤリティの低下、運営事務の破綻などを引き起こす場合もあり、相応のリスクもあります。
このコラムでは、NFT活用の「オモテカタ」であるNFTの魅力と、「ウラカタ」である特に法令面での注意ポイントを整理します。
ベンチャー企業に限らず、事業の拡大、継続的な成功には、ファン顧客の創出がキーポイントとなります。
このコラムを参考に、NFTの活用により、ファン顧客の獲得を検討されるのもよいでしょう。

1 NFTの魅力
(1) 唯一無二性

NFTの魅力の一つは、NFT保有者に、そのNFTに紐付けられる資産の所有者としての証明を与えることにあります。
なじみのあるビットコインなどの暗号資産は、資産の裏付けはなく、暗号資産の保有者は、暗号資産の購入に当てた現金についても、法律的には再交換の権利は保証されていません。
これに対して、NFTはトークン上に所有者情報を書き込めるため、特定の資産と紐付けてトークンを発行することが可能となります。
例えば、デジタルアートを発表する際に、その著作権などをNFTでトークン化し、購入者の情報を所有者として書き込んでおけば、誰がこのデジタルアートの権利者であるかが容易に証明可能となります。
この所有者証明の機能により、NFTは特定の裏付け資産との紐付けが可能となり、NFTは唯一無二性を持ちます。このNFTの唯一無二性が、NFTが暗号資産とは異なる魅力が発揮される理由となります。
(2) ユーティリティ

NFTの魅力は、唯一無二性の他に、保有者に対して、特典(ユーティリティといいます。)を与える点にもあります。
NFTの所有者証明の機能により、NFTの保有者は誰であるかが証明できます。これに付随して、保有者に対して、オーナーとして以下のような様々なユーティリティを与えることが可能となります。
①一定割合の割引や優先利用などの優待の権利を与えること
②一定額、一定数量の無料利用の権利を与えること
③コミュニティへの参加権を与えること
④資産の運用や売買による分配を与えること
⑤名称利用やオーナーリストへの記載などの、その他のユーティリティを与えること
⑥①〜⑤によってNFTの唯一無二性からマーケット価値が上がることに伴い、NFT保有者がNFTの転売により、値上がり益を得られること
これらのユーティリティをいかにミックスするかが、オモテカタとしてのNFT発行者の腕の見せどころです。特に、⑤は無限の選択肢があり得るでしょう。
2 NFTの活用例

ユーティリティに無限の選択肢があるため、NFTの活用例を分類することはなかなかに困難ですが、現在の活用事例として、概ね以下のように分類できます。
①オーナー型
②優待型
③無料利用型
④呼称利用型
⑤議決権型
⑥分配型
⑦不明型
例えば、楽天NFTやメルカリNFTで販売されているデジタルアートNFTやミュージシャンやスポーツ選手の画像NFTの場合には、著作権の一部が付与されている①オーナー型のものとなります。
また、NOT A HOTELなどで販売されている不動産NFTは、施設の一定日数の無料宿泊権を保有でき、転売可能となっています。そのため、③無料利用型に分類されるでしょう。
冒頭の青島NFTは、青島アンバサダーの呼称と施設の割引、将来的にはコミュニティでの投票権もあるので、②優待型、④呼称利用型、⑤議決権型に分類されます。
他方で、NFTにどのような権利が付帯しているのかが不明確なNFTも多数あります。このようなNFTが、⑦不明型のNFTとなります。実際には⑦不明型も数多く、権利関係は不明だが、NFTの保有感のみがNFTの価値となっているものも多くあります。
3 法令面での留意事項
(1) 権利関係

ウラカタである法令面の留意事項の1つは、NFTに紐付ける権利は何かを明確に意識しておくことです。
NFTに紐づくのが、著作権や無料利用権の場合、権利関係を明確にしておかないと、後でトラブルになり得ます。金額が安いNFTであればトラブルになっても大きな損害にはならないかもしれませんが、不動産NFTなどの高額なものであれば、致命的にもなり得ます。実際、①オーナー型を標榜しつつも、権利関係が不明確なNFTは沢山あります。
また、権利関係の説明についても留意が必要です。
NFTの購入の経験上、権利関係や規約、契約書などが準備されていることを十分に説明するNFTは必ずしも多くはありません。
また、NFTの種類にもよりますが、NFT購入予定者に、権利関係やリスクなど、一定の事項を説明することを義務付ける統一的な法律やルールもありません。
権利関係が不明確なら「買わない」というNFT購入予定者の判断に委ねる方法もあります。また、NFTはそもそも分散型で企業と顧客は対等な関係にあるのだから、特典が気に入らなければ勝手に「脱退すればいい」という考え方もあるかもしれません。
また、契約書や規約で縛りすぎると、NFTの本来の魅力である特典の設計の柔軟性を損なう可能性もあります。
しかし、NFTを購入者が金銭で購入していること、ユーティリティ変更の提案または決定が、事実上、NFT運営側に依存していることを考えると、一定の規約を定める、NFT販売時には十分な説明を行うといった縛りや規律を設けることは、後々のNFT購入者とのトラブルを避ける観点からも、設計時に検討すべきでしょう。
(2) 金融関係のライセンス

ウラカタ2つ目の留意事項は、金融関係のライセンスの取得の要否の検討です。
③無料利用型の場合、NFT購入者は購入時に一定の金額を事前に支払い、施設やサービスを一定の範囲で無料利用できます。
これはアマゾンギフトカードやスターバックスカードのように、商品・サービスの料金を前払いしているものです。
これを前払式支払手段といい、前払式支払手段を発行するものは、前払式支払手段発行者として資金決済法の適用を受けます。
発行規模(基準日の未使用額が1000万円を超えるか)と無料利用(自己のグループの商品・サービスか、第三者の商品・サービスか)の範囲によって、事前の登録、事後の届出が必要となります。
また、登録、届出をした前払式支払手段発行者は、顧客から預かった金銭の一部の供託義務や情報提供の義務があります。
⑥分配型の場合、スキームや紐づけられている資産によりますが、例えば不動産に紐付けられたNFTで不動産の運用益や売買益の分配を受けられる場合などには、運営側に不動産特定共同事業法のライセンス取得や販売に際して第二種金融商品取引業者のライセンス取得が求められる場合があります。
⑥分配型の事例は多くありませんが、ライセンス未取得の事業運営であったことが後で分かった場合には、そのダメージは相当に大きくなるため、NFT設計時には十分なリーガルチェックが必要です。
その他、NFTにレアリティを持たせ、購入者間の2次売買の加熱によりNFT価格が乱高下する場合、賭博罪などの該当性が問題となる場合があります。
4 専門家に相談するメリット

NFTの魅力は「オモテカタ」の設計の柔軟性です。他方で、その柔軟性ゆえ、権利関係の明確化やライセンス取得の検討を怠ると、せっかく成功したNFTが違法だったということがあり得ます。
③無料利用型の設計で考えていたけど、②優遇型として設計すればライセンスが不要だったのに。
②優遇型で設計してたつもりだったのに、実質的には③無料利用型だった。
ということも起こりえます。
NFT活用に際しては、専門家に相談することをおすすめします。
当事務所においても、初回30分までの無料相談を実施しております。お気軽にお問い合わせフォームからご連絡下さい。

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